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青井 茂 株式会社アトム 代表取締役

今起きたことは運が良いか悪いか。そんな決めつけは、つまらない。

What's ART

By Art dealer Mirai Patrick Sayama

ども。はじめまして。アートディーラーのパトリックです。縁あって、A-TOMさんとお仕事させてもらっています。アートディーラー・アドバイザーって、あまり馴染みないですか? 日本語で一番近いのは「美術商」。簡単に言えば絵画などの作品をアーティストから仕入れてコレクターに販売したり、アート市場やアーティストの情報を提供したりする仕事です。ちなみに皆さんは最近どこかでアートを見ましたか? カレンダー? ポスター? 僕が常々思うのは、日本では日常的にアートと触れる機会が少な過ぎるっていうこと。アメリカでは、あ、ちなみに私は日本人ですが赤子の時からアメリカ育ちで、ついアメリカと比較してしまうのですが、向こうではお金持ちだけじゃなくて、誰でもアートに触れられる機会がたくさんあります。たとえば地下鉄。駅の構内にブロンズ像がひっそりと置かれていたり、壁のタイルに前衛的な絵が落書きみたいに描かれていたり。アートって全然特別なものじゃないんです。そうそう、落書きと言えば“元祖落書きアーティスト”のジャン=ミシェル・バスキア。この人の絵、27歳の時ヘロインのオーバードーズで亡くなったあともどんどん値上がりして、今や100億円を超えました。100億ですよ、100億! そのきっかけとなったのがあの、ZOZOTOWNの前澤社長。2016年、彼がバスキアの絵を62億円で落札して以来、バスキアはあっという間にブルーチップ・アーティストの仲間入りを果たしたのです。でもね、こう言う人もいるわけです。「お金持ちに目をかけられたアーティストだけが本物なのか」「アーティストとして成功するかどうかは『運』なのか」って。まあ、それはもっともです。「誰に認められずとも、コツコツ日陰の道を歩いています」みたいな玄人のアーティストには、著名なコレクターやディーラーと出会うチャンスはないかもしれない。今や現代アートの巨匠でもある村上隆さんを見てもわかる通り、アーティストが彼らの目に止まるのは大抵、世界中で開催されているアートフェアなのですが、コツコツ型のアーティストは華やかな場に目もくれず、アトリエにこもり、頭を掻きむしりながらひたすら描く、修行の日々を送っています。でもね、僕の持論では「アートは運」。アーティストとしての成功は、世界のアートシーンで評価され、マーケットで高額な価格がつくことも指標のひとつだと思うんです。結局、アート界で上に行くには、どれだけたくさんのコレクターやディーラーと接点を持てるかにかかっているということ。バスキアはもちろん、ピカソだってセザンヌだって岡本太郎さんだって草間彌生さんだって、みんな積極的に自分から打って出てアピールして、運をつかむ努力をしたからこそ成功したわけです。実は世界的に影響力のあるコレクターやディーラーも同じで、たとえば日本の藝大とか著名なアート系大学の学園祭にまで出かけ、「これは!」っていう人を見つけている。そして、ただ作品の良し悪しを見るのではなくて、アーティストの人間性に惚れ込んでその作品を買うんです。恋愛と一緒ですよね。「いい出会いないかなー」ってつぶやきながら、部屋でゲームをしているだけじゃ絶対いい人は見つからないし、見た目だけじゃその人の本質はわからない。結局、アートと恋愛って同じなんですよ、Art is just like romance! アートは運。恋愛も運。そう思ったら意外とアートを見る目も変わるのでは? 日本ではアートと出会える機会が少なくて、せいぜいどこかの美術館のなんとか展に行くくらいだけど、たったひとつのアートとの出会いが人生を変えることだって、もしかしたらあるかもしれない。アメリカみたいに、日常的にアートと触れ合う機会がもっと増えたらいいなあと思うこの頃です。あ、ちなみにコートヤードHIROOでも不定期でアートの展示やっていますので、よかったらよろしく。

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Bar MIZO A-TOM CO,LTD.

心からの言葉を誠実に話す。だから、仲間に心が通じる。

自分を信じ、「誠実」であるべき

溝口:大学時代、同じチームでラグビーを頑張ってきた仲間としていつも思っていたけれど、廣瀬はまさにキャプテンになるべくして生まれた男。いくつものチームでキャプテンを務めてきたんだよね。

廣瀬:はじめてキャプテンを務めたのは中学生だったとき。高校、大学、東芝、日本代表でもキャプテンをやらせてもらったね。

溝口:それだけ指名され続けたのはどうしてだと思う?

廣瀬:なんとなく思うのは成長志向かな。常に「よくなりたい」って思っていて、そういう姿を周囲に見せられるのがキャプテンに指名される理由かもしれない。でも、学生時代と社会人ではキャプテンに求められるものが違うんだよね。

溝口:どういうこと?

廣瀬:学生時代はチームで一番うまい人がキャプテンになるのが普通だったから全員納得したし、自分の理論が通用した。でも社会人チームでは外国人選手もいるし、もっとうまい人もいる。だからまとめるのに苦労することも多かったよ。

溝口:たとえば?

廣瀬:東芝では自分の前に冨岡さんがキャプテンをやって勝ち続けていた。冨岡さんは熱血系で言葉も上手。僕とはタイプが違うんだよね。

溝口:確かに廣瀬は冷静で、あまり感情を出さないよね。

廣瀬:はじめはいつも「冨岡さんならこうするはず」っていう考えが頭にあった。正直、やり辛かったね。

溝口:克服したのは?

廣瀬:キャプテン2年目かな。原点に返って、自分らしさを取り戻そうって思ったんだ。「この人、無理しているな」って感じたら周りは信頼してくれない。だから、どんなときも自分の言葉で語りかけよう、たとえ間違えることがあっても自分を信じ、誠実であり続けようって思ったんだ。

みんなでつかんだ南ア戦の奇跡

溝口:2012年、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチからキャプテンに指名されたときはどうだった?

廣瀬:ワールドカップまでは4年間。1年目の目標を「勝つ文化を作る」と決めて、みんなで「勝つチームとは、どんなチームだろう」って話したんだ。そうすると、たとえば試合前の国歌斉唱でも、「勝つチームなら誇りを持って、堂々と歌うはず」っていう具体的な行動指標が見えてきた。「いつでも万全の準備で試合に臨む」「ファンを大事にする」とかね。

溝口:日本では、ラグビーはそれほどメジャーじゃなくて、当初はワールドカップに対する関心も高くなかったよね。

廣瀬:そう、それをなんとかしたかったんだ。2〜3年目にはチームが段々強くなって、勝てるわけないと思ったウエールズにも勝つことができた。だけどそのうち、「勝つけれどなぜかラグビーが楽しくない」っていう矛盾がチームに蔓延し始めたんだ。そこで「自分たちはなんのためにラグビーをしているのか」って考えた。そうしたらメンバーから「日本のラグビーを変えたい」「憧れられる存在になりたい」っていう声が聞かれたんだ。

廣瀬:誰もが憧れる存在になるためにひたすら練習して、常勝チームを目指した。そのひたむきな努力があの、南ア戦の奇跡を呼んだんだね。

まずは「アトム・ウエイ」を見つけること

溝口:いまA-TOMはミッション「2030」を掲げ、2030年までに売上20億の会社を30個つくることを目指しているんだ。そのためには30人のリーダーが必要になるんだけど、企業のリーダーってどんな存在だと思う?

廣瀬:リーダーとキャプテンはニュアンスが違うと思うんだ。チームでいえばリーダーは監督。人事権を持ち、チームの方針を決める人だよね。一方キャプテンは、リーダーとメンバーを繋ぎながら、組織としてどう目標を達成するか考える人だと思うんだ。

溝口:なるほど、そうなるとA-TOMにはリーダーとして事業を起こしつつ、キャプテンとして仲間を導いていく、二つの顔を持った人材が必要になるのかな。

廣瀬:そもそもリーダーとキャプテンは見ている世界が違うよね。リーダーは少し先の将来を見据えて指針を示すけれど、キャプテンは「今」を見て、やるべきことを考える。だけど、キャプテンはリーダーと同じ目線も必要で、リーダーの考えをわかりやすくメンバーに伝えることも役割だと思うんだ。

溝口:目標達成のためのアプローチが違うんだね。

廣瀬:そう。僕が感じるいいチームとは、そのチームの“カラー”や”イズム”があること。そして、メンバーがチームに対してロイヤリティを持っていること。チームの中で自分にしかできない役割があり、自分は替えのない存在なのだと実感できれば、誰でもチームのために全力を尽くしたいと思うよね。企業でも同じだと思う。

溝口:会社としての“イズム”は大事だよね。A-TOMは今、60代以上のベテラン社員が頑張る一方、若手社員も増えていて、歴史的に見れば過渡期といえるかもしれない。働き方に対する考え方や物事の価値観もさまざまだから、まずは「2030」を実現するための土台として、”アトムのイズム”を共有することが必要なんだね。

廣瀬:全日本ラグビーチームでも、エディは「ジャパン・ウエイ」をチームの方針として掲げた。日本人の特徴は信頼や忠誠心、努力。「それらを生かし、外国のコピーではなく日本独自のラグビーをするチームにならなければならない」という考えをメンバーに徹底したんだ。だから日本は世界の舞台で勝てた。企業も同じく、「自分たちだからこそできること」を考え、それを信じてやり抜くことができたら、必ず結果がついてくると思うんだ。

溝口:まずは、「アトム・ウエイ」を作り、それを社員が文化として共有する。そういう土台があるからこそ一人一人が会社にコミットし、能力を最大限発揮できるんだね。もう一度、自分たちが誰のために、何をする会社なのか。原点から考えてみる必要がありそうだ。

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