2019年A-TOM Art Awardでグランプリを受賞した沼田侑香による個展を開催致しました。
彼女の作品を通して、 改めて現代の情報社会における「情報」というものは何なのかを吟味する機会をいただきました。
情報は誰かの定義した「曖昧な」記憶と感触で成り立っている、と感じます。
言い換えるならば、「情報」を処理するためには自分の記憶や知識を咀嚼する必要がある、ということです。
沼田さんの作品はしっかりしたコンセプトや意図があるものですが、
その一方でそれすら本展示においては「情報」をまとった媒体のひとつでしかなく、どう読み取るかはあくまで受け取り手の自由がある。
例えばチューリップを一つ見ても、あなたの思う"チューリップ"と私の思う"チューリップ"の情報が100%一致することはない。
その情報処理の歪みは、時に懐かしい記憶との再会であり、過去の傷口と向き合うものであり、優しい光であり、見る人それぞれにとって今までの忘れていた宝箱をあけるよな特別な作業になります。
無機質にも有機質のもなる「情報」というものに対し、自分だけが知る特別な後味が残る。
とても「曖昧」だけど「親密」である、タイトル通りの素晴らしい空間でした。